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今回のISによる日本人拉致殺害警告に関連して、安倍首相のイスラエル訪問や、エジプト・カイロで表明したIS周辺当事者国に対する支援金の件が問題視されている。これについては、IS自らがメッセージで名指しで突いてきている点だけに、何らかのトリガーとなってしまった感は否めない。もちろん、だからといって、何でも安倍首相が悪いと言うつもりもない。テロの口実とされてしまった、まんまとやられた、という気もする。ただ、個人的にも、フランスの「Charlie Hebdo事件」の直後でもあったわけだし、もう少しいろいろ気を使えなかったのか(主に取り巻きの役人が)とは思う。

“72時間は短すぎる。時間をもう少しいただきたい”〜イスラーム法学者・中田考氏がイスラム国の友人たちに呼びかけ(BLOGOS)

こちらの記事にもあるように、中東を歴訪するのであれば、かなりいろいろなことに気を遣わなければならないのは、常識だろう。特にイスラエルについては、本当に付き合い方を間違えると、この地域での信頼を一気に失う可能性がある。日本の外交は、どちらにもつかず、のらりくらりの八方美人的外交だと思っているが、それで今のところ問題ない。少なくとも、この地域に関して言えば、アメリカに追随していいことはないと思う。

しかし、今回の中東訪問が、エジプト、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンだけだったというのは、やはり少し腑に落ちない。事件が起こった直後の首相会見はイスラエルで行われたが、「中東の安全」について「イスラエル」でスピーチすること自体が何かズレており、やたらイスラエルに媚びているような雰囲気を僕ですら感じ取った。彼の地のムスリムであればなおさらだろう。前もって仕組まれていたのかもしれないが、結果として火に油を注ぐようなものになってしまったような気もする。

もちろん、こうしたスピーチも外交日程も作るのは外務省の官僚だろうから、責任はむしろ外務官僚にあると言えるのかもしれない。その道のプロであろうに、上記リンクの中田先生の言葉を借りれば、「非常に不用意であると言わざるを得ない」と思う。要するにセンスがないのだろう。

そもそも、こういう事態を日本は想定しておらず、交渉パイプも、情報収集手段すら、自前では持っていない。72時間という時間の中で、何かをなせる可能性は残念ながら非常に低いと言わざるを得ない。どこかのアホな国会議員が、「それ、こんなことにも対応するように憲法改正だ、軍事強化だ」などとほざいているようだが、軍備力強化よりも、まずは情報収集のためのインテリジェント達をしっかり組織すべきだろう。

いずれにしても、今できるパイプは全力で使って、邦人の生命保護に最善を尽くしていただきたい。